男達に強姦されたのは、
自殺した三日前の事。
ボロボロで帰った安奈を見て
全てを悟った安寿は固く固く、
安奈を抱き締めた。
声を上げて二人で泣いた。
頑張って生きて行こうと決めたのに。
弱い自分が死へ逃げた事は、
後悔している。
飛び降りた私を見て、
安寿はどう思っただろうか。
そう考えると胸が締め付けられた。
「安奈?」
小刻みに震える安奈に、
アランがそっと尋ねる。
安奈は何でもないと、そう答えた。
安奈が堕ちたのは、異世界だった。
ゼリア王国。
大陸が四つに分けられたこの世界。
その内の一つの国へ
来てしまったという訳だ。
それも、空からこの湖に堕ちた所を
たまたま居合わせた王族の家臣である
アランに助けられて、
今は城に住まわせてもらっている。
だが、この国の王は
氷のように冷たく残忍。
恐ろしい悪魔のような人物で、
安奈はあまりの好きではなかった。
白銀の長髪に、整いすぎた顔。
あの赤い目に睨まれると、
どうも恐ろしくて震えが止まらなくなる。
城に連れられた時に一度会ったが
正直、二度と会いたくはなかった。