このまま、止むまで学校に残っていようかな? そう考えたけど、止みそうもない雨ともう帰っているであろう小学生の弟のことを思い出し、 ずぶ濡れになってでも今帰ろう、と覚悟した。 そして鞄を傘代わりのように頭の上に乗せ、 冷たい水の世界へ飛び込もうとした、その時 「綾崎さん?」 そうわたしの名前を呼ぶ、聞きなれない声が聞こえた。 低いような、少し高いような、そしてどこか安心感を感じるような、 そんな優しい声。