部屋に響き渡る数々の音ー。
風、小鳥の囀り、バイオリンの音色ー。
嫌いなレッスンの筈なのに、この時だけは素直に心地良いと思える。
このままこの時と共に消えてし…
「こらっ!」
「うわ!?」
「うわっじゃないだろ。ちゃんと間違えたところ聞いてたか?」
私は驚いた拍子に落としてしまった楽譜を拾い上げて、眉間に皺を寄せた〝都刷先生〟を見た。
「もちろんです。楽譜2の間奏部分のソとミがファになるんですね」
私は得意げに微笑んだ。
そんな私を見て都刷先生は1つ大きなため息を吐いた。
「瑠実、最近ボーっとしてる事多いんじゃないか?少しは休んだらどうだ。」
都刷先生は腕を組みながら眼鏡をクイッと上げた。
「都刷先生眼鏡新しくしたんですね」