今、ほんの一瞬だけ殺意を宿した気がした。
奪う事に躊躇わない、迷いがない一瞬。
今、本気で葉月をーーー。
「やめ、て…」
ない力を精一杯振り絞ってクロサキの足首にしがみつく私は何度も首を横に振る。
殺さないで。環が言う本当にどうしようもない男だけど、9年間ずっと私のすべての人だったの。葉月しかいなかったの。
そんな葉月を助けようと選んだこの選択を、間違ったと思いたくない。
そんな最悪な結果を生むために、あんたの駒になったんじゃない。
睨み上げる私をジッと見下ろして間を開けると、
「…わかったから、足、離せよ」
脱力した声が落ちてきた。
面倒くさいと言うよな溜息を零して、足元で倒れる私を抱き上げる。
開いていたドアを足で締め、隙間の面積は次第に消えていく。
クロサキに抱き上げられる私を葉月はずっと見ていた。
恐怖と嫉妬が入り混じったそんな表情を浮かべ、「行くな」と力強く目が訴える。
葉月の腕が私に向かって伸ばそうとした瞬間、
「自分で尻拭いもできない餓鬼が」
もうそこに葉月の姿はなかったーーーー。