手に持つ濡れた茶封筒を葉月の胸に押し付ける。
雫が滴る前髪の隙間から覗く葉月の目がギョロギョロと生き物みたいに動き回ってる。
何が何だかわかってない様子で、口から出るのは動揺と、寂寥と、沸々と宿る怒り。
「なん、だよ、これ…」
「今日中にこれを渡して。今月分と上乗せした分もある」
「いったい、どうやってこんな大金…」
「葉月、聞いて」
「しかもなんで、そんな格好して…」
私の声に聞く耳を持たずに上から下へと見逃す箇所がないように視線は下がっていく。
それは私の足元へ止まりジッとそこを見入ると、次に合ったのは私の目だった。
瞳の奥に殺意に近い感情を宿した葉月が、そこにいた。
「お前、まさかーーーーー」
「ッぅ」
ーーーー殺されると思った。
一瞬で死への恐怖に支配され、逃げようと思った時には既に遅かった。
茶封筒を押し付けてた私の腕ごと払い除け、それは瞬時に私の喉元を捕らえた。
「他の男にカラダ売って作った金じゃねぇだろうな?!?」
爪を食い込ませドアに押し付けてくる威力に抗うけど、男の力に敵う筈もなく締め上げる腕を必死に引き剥がす。
「その男とさっきまでヤッてたのかよ!?」
「…や、め…」