子供をあやすように、湿った葉月の髪を撫でる。
まるで大きな小動物を飼ってるみたい。
「悪い、俺、お前に酷いことして、」
「大丈夫」
葉月の体重に押されて背中がドアに当たった。
懺悔する葉月の中にある罪の意識を軽くしてあげたい。
もっと言えば、私なんか忘れてほしい。
「頭がカッとなって、自分で自分が抑えらんなくて、」
「何ともないから」
「ホント悪い、許してくれ…カイリ…」
「…葉月…」
葉月をこんな風にしたのは、私の所為だったのかもしれない。
「頼む…ずっと、そばにいてくれ…」
「……」
ずっとなんて、私たちにはないって葉月も気づいてるはずでしょう?
「お前がいないと無理なんだよ…今更離れるなんてできねぇ…」
「……」
いや、違う。今が終わらすチャンスなの。
「もうちゃんとするから…ちゃんと働いて金返す。もう絶対殴ったりしねぇから」
「……」
これから、なんてものは、私たちにはないわ…。
「カイリ…好きなんだ。お前しかいねぇんだ…」
「……葉月、」
錯覚は消して。もう、何もかも、手遅れなのよ…。
「……」
「もう、終わりにしよう…」
ーーーーーこれで、終わりだ。