「返済は今日まででしたよね。約束のものです」


胸ポケットから出された厚みのある茶封筒。
それは、私が望んだもの。

向い合う環から差し出されたこれを、私は受け取るしかもう道はない。


「…ありがとう、ございます。いつまでにこの分を、」

「いえ、結構です」


目の前にあるそれに手を伸ばす手が環の一言によって停止させられた。



……え?



「通常であれば期限と利子付きでお返ししてもらうのが通です。ですが収入がない場合はお貸しする事は出来ません。とんずらされては元も子もないので」

「じゃ、じゃあ」

「僕らは "貸したものが利益になって返ってくる" システムが成立してればなんだって良いんです。こちらもビジネスなので、収入がないのであれば収入先を提供する、」

「……」

「例えばーーーー"手っ取り早く稼げるお店" を紹介する、とか」

「ッ」

「この金は組の資金です。無利益で貸せるわけがない」

「わ、私にで、デリヘルか風俗嬢にでもなれって言うの…?」


声が震えた。

したくもない仕事をさせられるって考えがなかったわけじゃない。お金を借りる条件が歪だと安易に予想は出来ていた。