あたしより黒い腕についている高そうな腕時計がムカつく。


「許して、もういいよって、仲直りして」

「もういいよって何が?」

「もう許すってこと」

「浮気を?」


ひっかかる。そう言われると、なんか違う。

あたしは浮気を許したわけじゃない。彼がずっと謝ってきて、ご機嫌取ってきて、結局あたしが許すというカタチになって。


「怒ってた自分を許したのかも」


三回目の浮気は目撃した。

彼と目があってあからさまに逸らされた。遠くだったけど、隣にいた女が「知ってるひとでもいたの?」と聞く。彼は「違う」と口を動かすのが見えた。