爽やかな春の風があたしの頬に触れる。
ピンクの綺麗な花をつけた木々が
さわさわと音をたてる。


春日美桜(カスガミオ)。


春も桜も大好きなあたしの名前。
大好きなものが2つも入ったこの名前が
あたしは大好きだった。


保育園へ向かうとき、
あたしはいつもこの桜並木を通っていく。
桜を見ているこの一瞬が
あたしの大好きな時間の1つだった。


「おねえちゃんっ!」

保育園の敷地内に足を踏み入れると
真っ正面から一生懸命、
あたしの元へと誰かが走ってくる。

誰か、なんて近くで見なくてもわかる。


「おねえちゃん!ただいまぁ!」

そう言ってあたしに抱き着いて来たのは
やっぱりあたしが思ってた通り、
大好きな妹の咲桜(サオ)だった。