「…ハァ…ハァ…」


歪んだ顔で僕の顔を見る。

左の頬がヒリヒリ痛む。

でもこれでいいんだ。


「わかった?僕がどーゆー人間か。サイテイなクズ人間だよ」


ハナの身体を押しのけて、ベッドから立ち上がった。


「僕のこと世間知らずとか言ってるけど、キミの方がずっと世間知らずだよ」


「…なにそれ…」


もう躊躇することもない。

2度と会わないんだから。


「ハナみたいにみんながみんな綺麗事だけで生きてるわけじゃないんだよ。僕はお金が必要なんだ。だからこうしてお金を稼ぐ。これが世間だよ。」


「僕は汚いんだ。軽べつすればいいよ。でも僕の領域に先に入り込んだのはハナだよ」


部屋の奥にカーキ色のリュックがある。

黙って背負って、俯くハナを残して部屋を出た。

改めて見ると小さくて、温かい空間だ。

いい香りもする。

ハナはこういう所で暮らしてきた。

僕とは違う。