「何をぼんやりしてるんだ?」
ふと後ろから声がして、振り返る。そこには私のよく知る人が立っていた。

「泉くん!」
日本人離れした彫りの深い顔、やや白い光沢のある頰。彼は氷のように澄んだ目で私の顔を覗き込んだ。
「ぼやっとしてると、新学期早々遅刻するぞ」
強いセリフとは裏腹に、彼の顔には薄っすらと笑みを浮かんでいる。
「ぼやっとなんて、していないよ。泉くんこそ、まだ学校行ってなかったの?」
私たちのいる場所は、学校から3つ離れた駅のホームだ。