内容はこれ。

『店食での話は無しだ。ヤツが周囲にいるだろうと思ったから話した。今夜、ヤツが君たちを狙ったところで仕留めることにする。連絡はメールのみで。次の休憩で質問に答えるから、聞きたいことがあればどうぞ』

 ───────は?

 そう思った私は勿論質問メールを送った。いや、正しくは送りまくった。何いってるのか判らなくて、ちょっとムカついてもいた。だって保育園にすぐ行かなきゃならない時に、何面倒くさいことしてくれやがるんだ、あの男は!!と思ったからだった。

 そんなことで、結局本当の作戦会議はメールで行われたのだった。

 夫は言ったのだ。あいつは何でも屋だろう、きっと、百貨店にも忍び込んでるぞ、って。俺だって階が違う人間のことまで全員の顔を知っているわけではない。食堂にあいつが紛れ込んでいても判る自信はない。だから、ヤツが盗み聞きしている前提で話したんだ、って。

 確かに、あの込み合った店員食堂に出入りするのは百貨店の社員だけではない。アルバイトや短期の派遣の者、掃除の人や出張でたまたまいるメーカーの人間だってイベントの什器運搬会社の人間だっている。

 着ている制服で所属階や階級を予想するだけで、初めてみた顔、なんてごろごろ居る場所なのだ。普通のスーツ姿の人もいるし、私服姿の人もいる。

 蜘蛛が潜んでいても二人とも気がつかなかっただろう。いや、実際、気がつかなかったのだ。

 保育園から帰宅したあと、お風呂にも入り、ご飯も食べた雅坊はいつもの通り8時半には寝ている。もし起きた時の対処に誰かを家に派遣する、と夫は言っていた。