「大声で叫ぶわよ」
「やればいいだろう。ここら辺は敷地が大きな家ばかりでちょっとやそっと叫んだくらいじゃ誰も動いちゃくれない」
それが判ってるから、ここで私の前に出てきたのだろう。私も判ってる。一応言ってみただけだ。だって、それが一般的な反応でしょう?
私は不機嫌な顔のままで言葉を続ける。
「息子を簡単に渡すと思ってるの?どうしてそんなにバカなのか判らないわ。これこそ無駄な時間でしょう?他に仕事がないなんて、あんた何でも屋としても3流なのね、きっと」
ここに桑谷さんがいたら怒るに違いない。そう思いながらも、私は言いたいことをベラベラと言ってやった。だってどうせ危機なのだ。黙ってその結果を受け入れることなんてない。
ヤツは両手をだらりと体の横に下ろしたままで、無表情のまま言った。
「───────あんた、本当にムカつく女だな」
私は顎をつんと上げてみせる。
「それはありがとう。変態のバカ野郎に褒められたってちっとも嬉しくないから、どうぞいくらでも罵って頂戴」
はあ~、と大きなため息。
それから、蜘蛛は腰に手をあててダラダラと話しだした。
「俺がどうして蜘蛛って呼ばれているか、知ってるか?」
「興味ないわね」
折角答えてやったのに、やつは無視した。
「糸みたいに策を巡らせて、ターゲットをしとめるからだ。お前らもそうなる」
私はふんと鼻で嗤う。
「あんた、ナルシストって呼ばれてない?」