他のメンバーは黙って待っていた。歌手とマネージャーは不安そうに顔を見合わせて、しばらく無言で考えているようだった。

 その内に、歌手の方が口を開ける。

「ええと・・・すみません、突然のことで混乱してます」

 滝本さんが頷いた。

「それはそうでしょうね」

「私達は・・・あの人が誰かは知りませんが、とにかく眠らされたんですね?」

「はい、恐らく。他にそんなことをしそうな不審者はいませんから」

「で、皆さんが助けて下さった」

「助けたというのはちょっと違うかもしれませんが、まあ、放置はしませんでしたね」

 私の言葉に歌手はちょっとだけ微笑んで、座ったままで頭を下げる。

「私には・・・覚えがないです。だから、その・・・警察へ行きます。そしてパーティー会場へも連絡をとらないと。私達は急に消えたことになっているんですか?それとも主催者側はこの事態を把握してますか?」

 桑谷さんが片手をゆらりと振る。それから低い声で話した。

「誰が敵で味方かわからなかった。だからこっそりとあなた達を運び出しました。警察にいくのなら、その間に連絡を入れるといい」

 歌手が頷く。そして立ち上がろうとして──────マネージャーに、腕をとられて動きを止めた。

「ミレイさん、待って。・・・もしかしたら・・・」

「新井君?」

 歌手が怪訝な顔で振り返る。どうやら歌手より年下らしいマネージャーは、青い顔をして床を見詰めている。