国語の教科書を開く。

顔を上げると、斜め前に座ってるマドカと目が合った。

「大丈夫?」

マドカが口パクで言ってる。

私は笑いながら頷いた。

マドカも笑って、前を向いた。

まだ胸がドキドキしてる。

マサキがそっと触れた背中の感触がまだジンジンと残っていた。

どうしよう。

こういうのを押さえきれない気持ちっていうのかな。

さっきまでマサキと会っていたのに、今すぐにでもマサキに会いたくなっていた。


長い国語の時間が終わり、チャイムが鳴る。

まだ体に力が入らなくて、動けず自分の席にそのまま座っていた。

「ユイカ-!もうさっきは焦ったわよ!」

マドカが私の席のすぐ前に飛んできた。

「ごめんー。やばかったね。」

「まじでトイレ行ってたの?」

「違うよー。」

真面目な顔で聞くマドカの肩を軽く叩いて笑った。

「ひょっとして、マサキ先輩?」

思わず顔が熱くなる。

「ユイカのお兄ちゃんのこと相談に行ってたの?」

私はゆっくり頷いた。

「ユイカとマサキ先輩って、なんだか不思議な関係だね。」

マドカはほおづえをついて、私にデコピンをした。

「痛い-。なにするのよぉ。」

痛くはなかったけど、大げさに返した。

不思議な関係、か。

そんな関係、正直あんまり嬉しくない表現だなって思った。

だけど、それはマドカの優しさなのかもしれない。

だって、マサキにはちゃんと素敵な?彼女さんがいるんだもの。