「俺、今日シュンタに電話してみるわ。」

「うん、ありがとう。」

「シュンタのことで何か心配なことあったらいつでも知らせて。」

そのマサキの言葉は、すごく心強くて、そして私の気持ちを落ち着かせてくれた。

私が一人で背負わなくてもいい安心感、それだけで救われる気持ちがした。

きっと兄にとって、マサキは特別な存在。

今までもこれからも。

その時、チャイムが鳴った。

「ユイカ、早く戻れよ。じゃ、またな。」

マサキは優しく私の背中を押した。

やっぱりマサキは優しい。

普段はきついこと言うけど、でも、本当は温かい。

マサキのことあきらめなきゃなんないのに、こんな風に優しいマサキを見ちゃったら、やっぱり好きだ。

私のこと好きじゃないかもしれないけど、マサキのそばにずっといたい。

兄の後ろからそっと見てるだけでも構わないから・・・

自分の教室に向かって走り出した。

兄のことと、マサキの思いが、心の中でぐちゃぐちゃに混ざり合って自分が今どこへ向かおうとしてるのか見失いそうだった。

教室が見えてきた。

教室の扉から、心配そうにこちらを見ているマドカがいた。

私を見つけるなり、「はやくはやく!」と口パクで手招きしてる。

やば、先生も来てるのかな?

ダッシュで後ろの扉から滑り込んだ。

「かーわのー!」

ドスの聞いた先生の声が教室に響く。

どっと皆の笑う声がした。

「すみません!」

私はペロッと舌を出して自分の席に座った。

「トイレはもっと早めにいっとけ。」

またクラスの何人かがくすくす笑った。

トイレじゃないけど、今日はトイレと思ってもらってた方がいいわ。