手を固く握って涙をぐっと堪えた。

「めずらしいじゃん、お前が俺んとこに来るなんて。」

マサキは、私の表情からただ事じゃない何かを察しているようだった。

「あのね、お兄ちゃんのことなの。」

「シュンタ?また何かあったか?」

マサキは、私の腕をそっと促して廊下の隅に連れて行った。

「時間がないから端的に言うね。」

「うん。」

「またね、前みたいに元気がなくなってて、ずっと部屋にこもりっぱなしで・・・機嫌も悪くて。それに、今聞いたマドカ情報では、ここ1週間ほど学校にも塾にも行ってないみたいなの。」

マサキは、「そっかぁ。」と言いながら自分の髪をくしゃくしゃっとした。

「こないだ二人で話した時は大丈夫そうだったんだけどな。」

「そうなの、マサキと話した後はとても元気だったし、食欲も増えて私も安心してたんだ。でもその数日後、また部屋にこもっちゃって。」

「あいつ、一体どうしたってんだ?大学進学に対する不安や焦り以外にまだ何かあるのかな・・・。ユイカは心当たりない?」

「そんなの私もわかんないよ。お兄ちゃんは、マサキに敵わないっていつも言ってるけど、それが何か関係ある?」

マサキはハッとしたような顔で私の顔を見た。

「もしかしたら・・・。でもな、まさかな。」

マサキの目は、私の目を捕らえて話さなかった。

私の目から何かをつかみ取ろうとしてるみたいに。

苦しいくらいに、胸がドキドキしていた。