自分からマサキのところへ向かってるなんて、今までの自分じゃ考えられないことだった。

そう思ったら、急に足の回転が遅くなってきた。

教室へ行って、マサキを呼び出して、私なんて言う?

こないだマサキが彼女らしき「ひと」と一緒にいるとこ見て、まだショックから立ち直れないでいる自分。

ちゃんとマサキの顔見れる?

兄の事相談する以前の問題じゃん。

マサキの教室を目の前にして、足が止まってしまった。

だけど・・・。

兄のためだ。

兄のために私はここまで走ってきたんじゃない?

今頼れるのは、マサキしかいないって思ったから。

大きく深呼吸した。

マサキの教室の扉は授業前でまだ開いている。

先生も、まだ来てないみたいだ。

時計を見た。

1時限目の授業が始まるまであと5分ある。

そっと扉から顔をのぞかせた。

ドキドキしてる。

マサキ、どうかすぐに私に気づいて!

「どうした?」

私のすぐ後ろにマサキの声が響いた。

「マサキ!」

マサキを見上げて、その少年みたいな瞳を見つめながら泣いてしまいそうになった。

助けて、マサキ。

そう言いそうになって、もっと冷静にならなければって思う。