「でさ、ここで相談なんだけど、応援団だけじゃ、普通な気がしない?」

「だけど応援団なんだから応援団だけでいいんじゃない?」

なんだか面倒臭くなってくる予感がして警戒する。

「例えば、俺達のシンボル的な存在っていうかさ、マスコットみたいなもの作ったらどうかと思うんだ。」

「マスコットって?ゆるキャラみたいなイメージ?」

「うんそう。それをハリボテで作ってさ、応援団の横に常に置いておくってのはどう?」

また意表をついてくる提案だなと、半ば感心する。

だけど、かなり面倒な話でもある。

「ハリボテって大変じゃない?」

「美術の先生にもこないだ相談して作り方も聞いておいた。材料も手配してくれるって。」

「相変わらず用意周到なのね。」

「一秒たりとも時間を無駄にしたくないんだ。」

「あ、そ。」

鞄から水筒を取り出して、少し飲んだ。

「とりあえず、そのマスコットキャラクターをメンバー達にそれぞれ考えてきてもらって、最終的には投票で決めてさ。」

「え?そのマスコットってひょっとしてオリジナル?難しくない?」

「皆結構アイデアマンだからきっといいの出てくるよ。もし、今ひとつだったらムーミンみたいなのでもいいんじゃない?」

「ムーミンで体育祭勝てる気がしないけど。」

「ま、ムーミンは例えばの話でさ。皆が親しみの持てるキャラクターだったら何でもいいと思うんだ。だから、既成のキャラクターでもオッケーにして募集すれば、イメージわかない人でも参加できるでしょ。」

「まぁね。」

そう言いながら、私も早速キャラクターを考えてたりした。

「とりあえず、メンバーにはすぐに考えるよう頼んでおいて、来週の木曜日に集まった時にでも決めようか。とりあえず、早く作業始めなきゃね。ハリボテも結構時間かかりそうだから。」

「うん、そうだね。明日にでも皆に伝えておくよ。」

「私は女子達に伝えるから、山崎くんは男子にお願いね。」

ハルトは私の顔を見て、ふふんと笑った。

「俺が思ってた通り、河野さんって頼りになるタイプだよ。」

「一秒たりとも無駄にしたくないからね。」

私は真顔で返したんだけど、ハルトはその返しにやたらうけていた。

よくわかんないけど、何か形に残すって言うのは後悔からは少し遠ざかりそうだ。