すぐにマドカの指先の方を振り返る。

「マサキ先輩じゃない?」

マドカのささやく声と同時にマサキの姿が私の目の中にクローズアップされていった。

カフェの扉から入ってきたのは、マサキと・・・

マサキの後から、肩まで掛かった髪を揺らしながら入ってくる「ひと」。

どこかの制服。

でも、その制服は男子の制服じゃなくて、スカートだから、女子ってわけで。

頭の中が混乱していた。

一番見たくて見たくなかったものが、急に目の前に現れてる。

目をそらすこともできなかった。

ただ、その現実を嫌というほど目に焼き付けてしまってる自分が腹立たしい。

マサキは、見たこともない優しい目でその「ひと」に話しかけてる。

それから、ゆっくりと二人で奧の席に向かっていった。

それに、それに、マサキはその「ひと」の鞄持ってあげてる。

なにあれ。

馬鹿じゃない?

自分の鞄くらい自分で持てって。

マサキに鞄を持たせてる、その「ひと」に訳もなく苛立っていた。

「ひょっとしてマサキ先輩の彼女かな・・・。」

マドカは私に気遣ってか、静かに言った。

泣きそうだった。

ゆっくりとマドカの方へ顔を戻した。

「出よ。ユイカ。」

私の表情を見て、マドカは立ち上がった。

きっとものすごい顔をしていたと思う。

泣きそうだけど泣けない。怒りと情けなさと悲しみが同居したような変な顔。

私も立ち上がる。

だけど足に力が入らなくて、一瞬またイスにお尻が落ちた。

何これ。

膝ががくがくしてる。

私ふるえてるんだ。

マドカはさっと私の横きて私の腕を掴んでくれた。

ゆっくりと立ち上がって、さっきマサキ達が入ってきたカフェの扉に向かった。