私は先にキッチンで晩御飯を食べていた。

今日はから揚げだ。

全体的にわが家の食卓には揚げ物が多い。

太るから辞めてと何度も頼んでるのに、母は思春期の女子はしっかり食べて太って丁度いいと言う。

一旦太らないときれいな姿にはなれないんだって。

それは、おそらく母の勝手な考えだろう。

そう思いながらも、頭のどこかでそれを信じたい気持ちもあり、そんなことを考えながらお茶碗に山盛り白ご飯をついでもらった。


「腹減ったな。」

兄は、そう言いながらダイニングテーブルのイスに腰掛けた。

お腹空いたなんて言ってる兄を見るのは久しぶりのような気がする。

いきなりマサキ効果?

一体何話したんだろ。気になるけど、きっと聞いちゃいけないんだろう。

山盛りご飯を食べながら、兄がこれまた久しぶりにおかわりしているのをちょっぴりウキウキした気持ちで見ていた。

「マサキ、お兄ちゃんのこと、すごく心配してた。」

そう言いながら、さりげなくお味噌汁をすすった。

兄はちらっとそんな私を横目で見た。

「そうみたいだな。わざわざ来るなんてさ、俺もびっくりだよ。」

「今日マサキに会って、お兄ちゃんは何か変わった?」

言ってしまってから、足突っ込みすぎだなと反省する。

また「うるさい。」とか言われるかもしれないと身構えたけど、兄はそのままご飯を口に入れた。

「マサキには俺のことお見通しだな。」

沢庵をご飯の上に乗せながら、つぶやくように言った。

そして、お箸をお茶碗の上に置いて母の方を向いた。

「あゆみおばさんのお見舞い行ってこようと思うんだけど。」

母は、少し驚いた目で兄を見た。

そうだよね、急な話の展開だもん。

だけど、その後母はゆっくりと微笑んだ。

「喜ぶわよ。シュンタも久しぶりでしょ。来週だったら退院してるわ。顔見せたげて。」

「わかった。」

「あゆみおばちゃん、その後どうなの?お母さん、時々病院に行ってるでしょ。」

私もあゆみおばちゃんの話に乗っかった。