「久しぶりだな、マサキ。」

兄は思っていたよりも普通に返事をした。

「元気だったか?最近、お前、メールの返事も寄こさないから心配してたんだぜ。」

マサキは軽く兄の肩を押した。

「ごめん。返事しようと思いながら、うまく言葉がまとまらなくってさ。心配かけたな。」

この二人は何があっても大丈夫だって感じた。

「外で話さないか?」

「ああ、うん。母さん、ちょっとマサキと外出てくるわ。」

「はい、いってらっしゃい。お腹空いたら遠慮なく帰って来て、マサキくんも一緒に食べましょうね。」

相変わらず母はしつこい性格だなと思う。

さっきマサキはお構いなくって言ってたのにさ。

玄関の扉がゆっくりと閉まった。

私はそれを見届けると自分の部屋に入って行った。

マサキは本当に兄に彼女の話なんか聞くんだろうか。

絶対嘘だ。

だけど、元気のない兄は、あまり見たくなかった。

マサキと話をすることで、少しでも元の兄に戻ってもらいたいと思った。

そういうことができるのもきっとマサキだけだと思うから。

兄は結局その後1時間半ほどして一人で帰ってきた。

「マサキくんは?」

兄を玄関まで出迎えながら、母が尋ねた。

「帰った。」

「そう、残念ね。うちでゆっくりしてってくれたらよかったのに。」

母は肩を落とした。

「マサキはマサキで都合ってもんがあるだろうし、しょうがないよ。」

「うん、まぁそうだけど。いつもマサキくんにはお世話になってるから。ユイカのことも。」

何も世話になってないし、何言ってんだろ、母は。