「お前真っ赤になってやんの!さては好きな奴できたなぁ?」

マサキはニヤニヤしながら、でっかい声でちゃかした。

「声が大きいって!だからデリカシーのない人間は嫌いなのよ。」

「大きい声の奴には悪い奴はいないんだってよ。」

マサキは嬉しそうに笑った。

「ふん。」

と言って、自分のドキドキをごまかすためにプイと横を向いた。

マサキは気づいていないんだろうか。

私がマサキのこと、大好きだってこと。

「ひょっとして、ユイカ俺のこと好きだろ?」

「なっ!!」

突然頭上がら振ってくる、逃げ場のない私をその言葉はその場に張り付けた。

恐くてマサキの顔が見れない。

だって、今はだめだって言い聞かせれば言い聞かすほど、顔が熱くなってるんだもん!

「馬鹿なこと言わないでよね。」

うつむいたまま、小さな声で吐き出した。

「まぁ、俺みたいな男はなかなか落とすには難しいぞ。」

「・・・落としたくもないし。」

「ま、お前が俺って事は100%ないと思ったけどな、念のため。」

それがあるんだけどさ。心の中で突っ込んだ。

「でもさ、よく男の胃袋捕まえとけなんてよく雑誌に書いてあるけどさ、正直俺はそんなんでだまされねぇし。」

「ふぅん。」

そう言いながら、心の奥でメモをとる準備をする。

「俺がケガで動けなかった時、めちゃ優しい言葉と手作りのクッキーもらったときはさすがにぐっと来たけどな。」

彼女さんのこと?

「結局胃袋じゃん。」

胸が締め付けられるようだったけど、必死に返した。

「そうだな。胃袋、やっぱ大事かも。」

なんだかんだいって、『マサキも胃袋』そして『優しい言葉』って心のメモに刻んだ。

だけど、それって全部彼女さんのことなんだろうね。

そう思ったら、鼻の奥がツンとする。

平静を装うことに耐えきれなくなった時、わが家の門が見えてきた。

もう少しこの話題が続いていたら、堪えていた涙があふれそうだったから、玄関から漏れる明かりに、ホッとしていた。