「付き合ってたって誰から聞いたの?」

「えーっと・・・誰だったかな。」

マドカは急に慌てた様子で口を濁した。

「誰よ。私に言えないようなとこからの情報?」

「違うよ。実はうちのお姉ちゃん。なんか口が軽いって思われたら嫌だなって。」

「そんなこと思わないよ。でも、どうしてそんな話になったの?」

「んー、たまたまお姉ちゃんと久しぶりに話してて。なんとなくそんな話になっただけ。」

「なんとなくねぇ。」

まだ全てをしゃべりきっていないであろうマドカの顔をのぞき込んだ。

マドカは「何?」って顔で首をかしげる。

いつもはぐらかすときの仕草だ。

だけど、そんなことより、衝撃だった。

うちのお兄ちゃんは、マサキと違って真面目一徹なタイプだから、誰とも付き合ったことがないと思ってた。

勉強はできるし、見た目もそこそこいいから、昔からモテなくはなかったんだけど、女子に興味があるなんて思いもしなかった。

きっと、こんなこと母も知らない。

お兄ちゃんも一人の男だったんだ。

なんだかわかんないけど、むず痒いような変な気分だった。

「マドカのお姉ちゃんとはもう別れちゃってるんだよね?」

「うん。そうみたい。」

「どうして別れちゃったんだろ。」

どうでもいいなと思いながら、ぼそぼそと続けた。

「高校が別だったからかな。」

そうだった。

マドカのお姉ちゃんはマドカと違って、いや、失敬・・・お兄ちゃんよりも更に上の高校に受かってたんじゃなかったっけ。

自分より賢い彼女って、なんか気後れしちゃいそうだもんね。

しょうがないか。別れても。

妙に納得する。