「自分は自分のペースでいいのよ。人と比べるから焦っちゃうの。最終的には必ず自分にふさわしい選択ができると信じて今を過ごせばいいだけ。入試の時だって、自分を信じて受けたらちゃんと合格したでしょ?」

「そうだけど・・・。」

「よかったらもう一切れ食べる?」

空になったお皿に目をやって、おばちゃんは立ち上がった。

「うん、ありがとう。」

少し分厚目にカットされたパウンドケーキをお皿にのせてくれた。

「紅茶のお代わりは?」

「うん、いただく。」

パウンドケーキにかぶりつきながら答えた。

ほんと、おばちゃんには昔から甘えっぱなしだ。

母親以上にリラックスできるっていうか。

あゆみおばちゃんは自分の紅茶も入れ直して、また私の前にゆっくりと腰掛けた。

「焦っちゃだめなの。焦るとね、せっかくいい答えがあるのに見失っちゃうことがある。大丈夫よ。ユイカは。自分をもっと信じて。」

自分を信じる。

入試の時にそうしたように。

「そうだね。人は人、自分は自分だもんね。」

「そうよ。別に将来のことなんて高校時代に決めてしまわなくたっていいんだから。私だって大学の半ば頃に教師になろうって決めたんだし。全然それからでも遅くはないわ。」

「でもさ、大学は将来に繋がるところ選ばないといけなんじゃない?」

「とりあえず興味があるところへ向かえばいいだけ。大学入ったって修正はいくらでもきくわ。」

「そうなの?」

「そうよ。」

だんだんと気持ちが落ち着いていった。

熱い紅茶をゆっくりと口に含む。

体がポカポカしてきた。