「じゃ、久しぶりだし、ちょっとだけお邪魔しよっかな。」

マサキの声がする。

えー!こっち来るの??

慌てて立ち上がった。

通学鞄を胸に抱きしめて、わけもなくキョロキョロする。

まるで子供がかくれんぼでかくれる場所を探すみたいに。

「あんた、何やってんの。」

リビングに入ってきた母が、挙動不審な私の姿を見つけた。

「え、何って。」

母の声の方に顔を向けると、母の頭の二つ分上にマサキの顔が覗いていた。

ドクン。

心臓が大きく震えた。

なんなの?ただのマサキじゃない。いつも「ブス、デブ、チビ」って悪態ついてくる。

「せっかくだからあんたも一緒にお茶しなさいよ。」

母は気忙しくキッチンへ入って行った。

そうこうしている間に、兄とマサキはダイニングテーブルに腰を下ろす。

「お前も突っ立ってないで座ったら?」

兄が冷静な声で、少し半笑いの表情を浮かべて私を見ていた。

「相変わらず、お前の妹って変わってんな。」

私の動揺をよそに、マサキも更に悪態をついてきた。

「う、うるさいんだから。」

声を絞り出すようにそう言うと、私はその場から逃げるように廊下に出て階段を駆け上った。