余計に気持ちだけが焦ってくる。

ゆっくりと深呼吸をした。

「ちょ、ちょっと間ってよマドカ。私ももっとゆっくり考えたいよ。資格取るなんて、思いもしなかったから。」

「そうだねー。一緒に勉強できたら楽しそうなんて、勝手に先走っちゃった。ごめんごめん。」

マドカはペロッと舌を出した。

「それは楽しそうだけどさ。・・・とりあえず、私も何をしたいか決めて大学選ぶようにしようかなぁ。」

と言いながら、自分がしたいことなんて全く思いつきもしないんだけど。

ふと、あゆみおばちゃんの顔が頭に浮かんだ。

そういえば、こないだ母が呼び出された理由もまだ聞いてなかったっけ。

あゆみおばちゃんにも久しぶりに話したいし、会いに行ってみようかな。

急に思い立つってこういうことを言うんだろうね。

思い立ったが吉日とも言うじゃない。

今日はさすがに無理だけど、週末あたり会いに行ってみよう。

鞄から、自分のスケジュール帳を出して「あゆみおばちゃん」と書き込んだ。

「何なに?何書いたの?」

マドカがスケジュール帳をのぞき込んだ。

「母のお姉さんのあゆみおばちゃんてさ、本当にいい助言いっぱいしてくれるの。久しぶりに会いに行ってこようかなって思って。」

「うわー、いいなぁ。そういう助言くれる人が身内にいるなんて。」

マドカは心底羨ましそうな顔をした。

「マドカだって、お父さんとお母さん、いつもきりっとしててしっかりしてそうじゃん。うちの親と違って何でも相談乗ってくれそう。」

「両親共に普段家にいないから無理だよ。」

マドカはそう言いながら寂しそうな顔をして肩を落とした。

そういえば、マドカのお父さんは会社のえらいさんでいつも海外出張で家を空けることが常だった。

お母さんもバリバリのキャリアウーマンで、マドカはいつも家に一人のことが多いって言ってたっけ。

うちの母は完全なる専業主婦だから、マドカの気持ちが正直わからなかった。

いて当然の人が家にいなくなったらどうなるんだろう。

うちの母の場合は、いつもガチャガチャうるさいから少々家を空けてくれた方が家の中の空気がクリーンになるような気がするけどね。