私が中2の頃、高校に入学したばかりのマサキが久しぶりにうちにやってきた。

まさにひょっこりって感じで。

会う度に背が高くなっていくマサキは完全におチビな私を見下ろしていた。

「お前、こんなちっちゃかったっけ。」

玄関入って私を見つけるなり、大きな声で笑った。

久しぶりに見たマサキはサッカーで日焼けして少し浅黒くなっていて、その浅黒く小さな顔に、黒目がちな大きな目がキラキラしていた。

思わず、そんなマサキから目を逸らす。逸らすというよりは見ているのが限界な感じだった。

体中の血液が顔に集まっているのではないかというくらいに顔が熱い。

そんな顔を見られるのが恥ずかしくて、何も言えないままリビングの奥に引っ込んだ。

絶対変な奴だよね。私。

どうしてこんなことになってるのかその当時はわからなかった。

とりあえず、動揺を沈めるために熱い顔のまま、ソファーにどかんと腰を下ろした。


「あら、マサキくん久しぶりじゃない。」

そんな私をよそに、母親が私と入れ違いにリビングから玄関へ出て行った。

「お久しぶりです。」

マサキの少し低音の声が玄関に響いている。

「どう?高校生活は。」

「まぁまぁかなぁ。シュンタと違ってぼんくらの集まってる高校だから、俺にとってはそれはそれで気楽でいいいかなぁ。」

玄関にいる母親と兄の笑う声が聞こえた。

「ぼんくらって、そんな低い高校でもないじゃんか。マサキはいつだって謙遜ばっかなんだよ。」

兄が静かに言った。

「よかったら、お茶でも飲んでって。せっかく来てくれたんだし。」

母が余計なことを言っている。

ここにマサキがくるんだったら、私は2階に退避しなきゃなんないじゃない。

顔の熱いのに加えて、心臓がドキドキしてきた。