「どうしたの?ユイカまでため息なんかついちゃって。」

マドカが私の頭の中を見透かすような目でじっと見てきた。

「なんかねぇ。このままダラダラ高校生活過ごしちゃったらどうしようって。ちょっと焦ってるんだ。」

「ふぅん。ユイカも私と同じだね。」

「やっぱり?」

「うん。まじでこのままじゃやばいって思ってた。」

教室の時計を見たら、もうすぐチャイムがなる時間だった。

「ね、今日いつもの場所で一緒に勉強しない?」

マドカが大きく目を見開いて嬉しそうに笑った。

「勉強?勉強しよっか?」

きっと勉強はほとんどしないとわかってて、敢えて二回繰り返す。

「やった!」

マドカは小さくガッツポーズをした。

きっとマドカも勉強なんかしないってわかってるはず。

マドカってかわいい。

いっつも私のそばにひっついて、中学の頃はコバンザメなんて言われてた。

だけどそのひっつき方は、とても心地よかった。

必要な時はいつでもそばにいてくれて、一人になりたいと思ってる時は知らない間に静かに離れてくれていた。

チャイムが鳴る。

マドカにバイバイをして、ゆっくりと自分の席に戻っていった。


青葉の薫るこの季節は、なんとなく人の心をざわつかせる。

昔からあまり好きじゃない。

一人でいたら、ろくなこと考えないし。

今日は勉強する気にならなかったから、マドカに誘ってもらえてホッとしていた。

高校入って初めての中間テストか。

いい加減にはできないとは思ってるんだけどね。

気合い入れる前にマドカとこのモヤモヤを払拭するか。