リレーのスタートの合図が鳴った。

始まってしまった。

まだマサキの姿は見えない。

「応援合戦の用意もしなくちゃいけないよ!ユイカ。しっかりして。」

マドカが私の肩を揺さぶった。

そうだった。

せっかく皆で作ったハリボテ。

ハルトの思いのつまったハリボテ。

だけど、なかったらないで応援合戦をしなくちゃなんない。

ハリボテなしの段取りは、ハルトですら予想外の出来事でそんなメモは残されてなかった。

どうしよう。

色んな不安が頭の中をぐるぐるまわっていた。

その時、グランドの向こうにハリボテの頭が見えたような気がした。

「あれ?あれってハリボテじゃない?」

マドカも気づいてその方を指刺した。

ハリボテはどんどん近づいてくる。

でも、そのハリボテを持ってるのは、さっきマサキを呼びに行った友達だった。

慌ててきたのか、息を切らしてきたその友達はドスンと私達の前にハリボテを置いた。

「はい、これ。マサキが見つけた。」

「あ、ありがとうございます!マサキは?」

私はハリボテを大事に抱えた。

その友達は「うーん」と言って言いづらそうな渋い顔をした。

何?マサキに何かあった?

「言うなって言われたんだけど・・・。」

「教えて下さい!」

胸騒ぎがして、思わずその友達に詰め寄った。

「結局、ユウヤの仲間がハリボテを悪ふざけして隠してたみたいなんだけど、マサキの奴、せっかく一年生が一生懸命作ったハリボテを何してくれてんだってえらく怒ってさ。口論だけで済めばいいものを、ユウヤ達は手が早いもんだからマサキに殴りかかってさ。ぼこぼこの喧嘩になっちまって、先生もやってきて、今全員職員室に呼ばれてる。ちょっと大ごとになっちまったみたいで。ごめんよ。とりあえず、俺もマサキのとこ行ってくるから。」

そう言って、またその友達は校舎の方へ走って行った。

選抜リレーはいつの間にか終わり、退場の音楽が鳴り出していた。

マサキ、大丈夫なの?

こんな変なことに巻き込んじゃってごめんね。マサキ。

まだこないだの「ありがとう」も言えてないのに。

「ユイカ!応援合戦始まるよ!マサキ先輩心配だけど、とりあえず行こう!」

マドカが私の腕を掴んで応援団の方へ引っ張って走り出した。