回転させても出てきた言葉は最終的にこれ。

「聞いてない。」

我ながら、脳細胞の少ない頭を恨んだ。

「別にいいよ。聞いてたとしても。隠してるわけじゃないから。」

「え?」

思わずハルトの顔に視線を向けた。

ハルトはそんな私の様子を見て、笑った。

とても無邪気な表情で。

「やっぱり。河野さんて嘘つけない性格だと思ってたんだ。」

ハルトは笑うと、えらくかわいい顔になるもんだから、調子狂っちゃうのよね。

思わず私も笑っていた。

「嘘つけない人間には悪い人はいないのよ。」

「そうだね。僕もそう思うよ。」

「体、大丈夫なの?最近随分忙しいみたいだけど。」

「こんな生活ももう随分長いし、適当にバランスとってやってるんだ。忙しくした後はダラーってしてるし。平気だよ。」

「その病気は治らないの?」

「うん。今のところ治らないらしいよ。だけど、注意さえしてれば皆みたいに普通に生活できるんだ。」

「それならよかった。」

ハルトの明るい表情を見て、少し安心した。

「ハルトは強いね。見かけと違って。」

思わず口からこぼれてしまった。慌てて訂正しようと思ったら、

「それ、どういうこと?見かけは弱々しいって?」

ハルトは何も気にしてないような顔でつっこんだ。

思ってたより、ハルトはいい奴かもしれないって思った。

体育祭まであと少し。

がんばらないとね。

ハルトと本番に向けての最終打ち合わせをした。