翌日からは、また普段通りの日々が始まった。

兄は約束通り学校に行き始めた。もちろん塾にも。

「どうだった?」と気になってしょうがないといった風のマドカにはお兄ちゃんと無事出会えたことを簡単に伝えた。

マサキと兄の関係がややこしくなってる話は、言わないでおいた。

その後しばらく、不思議とマサキと顔を合わすこともなかった。

本当は、兄のお礼を言いに行きたかったんだけど、なんだか顔を合わせずらくて。

本来知らないことを実は知ってる時の態度って非常に難しいんだよね。

私はとりわけ嘘つけないタイプだし。

でも、どこかでばったり出会いたいなと、校内でいつもキョロキョロしてたんだけどね。

そうそう。

体育祭の応援団マスコットも無事に決まった。

マドカもお姉ちゃんにこっそり描いてもらったキャラクターを出してきて、投票でいいところまで行ったんだけど、結局美術部の女子のゆるキャラっぽいのに決まった。

美術の先生に指導を仰ぎながら、昼休みと放課後、残れるメンバーで作っていく。

思ってたよりも山崎ハルトって奴が、頼れる男子だってことに気づく。

何より手際がいいし、皆への指示も的確だった。

無駄がないっていうか、無駄がなさすぎ。

「きっと暇なんだろね。」

私がマドカに言うと、マドカは「ユイカはハルトのこと絶対褒めないよね」とケラケラ笑った。

なんだろ。

やっぱり最初の印象が悪すぎたんだと思う。

ハリボテの骨組みは美術の先生と、原案を考えた子とで作ってくれた。

そこに新聞紙を糊の入った水に溶かして、粘土状になったものをぺたぺた貼り付けていく。

これが、結構面白かった。

ひんやりとした新聞紙の粘土。童心に返るってこういうことを言うのかしらね。

マドカと私は率先してハリボテ作りに精を出していた。