部屋の扉が閉まると、おばちゃんはにっこり微笑んで、

「ユイカにまた会えて嬉しい。」

と言った。

「何言ってんの。いつでも会えるじゃない。」

「そうよね。だけど、病気になっちゃうとなんだか弱気になっちゃってね。だめね。こんなんじゃ。」

おばちゃんは両手で挟んだ私の手をぎゅっと握った。

「あれから、お兄ちゃん、どう?大丈夫そう?」

「あ、うん。随分落ち着いてる。明日も学校行くって言ってたし大丈夫だと思うよ。」

「そう、ならよかったわ。」

「お兄ちゃん、色々おばちゃんにお話したんでしょ?」

「そうね。ひさしぶりだったから、随分色んな話したわ。お兄ちゃん、とってもいいお友達がいるみたいね。」

マサキのことだ。

「うん。」

だけど、今もまだ友達として繋がってるのかはわからない。

「もしね、大好きな大親友を、ものすごく傷つけてしまったら、二人の関係はどうなっちゃうと思う?」

おばちゃんの手をゆっくりさすりながら、そっと尋ねてみた。

あゆみおばちゃんは一瞬首を傾げて、そして「あー。」と思い当たるような顔をして頷いた。

「お兄ちゃんのことね。確かこないだ来た時、そんな話してた。」

私は黙ったまま頷いた。

「お兄ちゃんも随分悩んでたみたいね。でも、私は正直に話した方がいいって言ったの。大好きな友達だからこそ、いい加減にしちゃいけないって。誠意は必ず伝わると思うわって。」

マサキにはその誠意は伝わってるのかな・・・。

「でも、ものすごく傷付けてたら、例え誠意があったとしても元の友達に戻れないってことはない?」

「・・・そうね。」

そうつぶやいて、おばちゃんは子犬のモールに目をやった。

「そういう友達関係も、確かにあるかもしれないわね。だけど、お互いに戻りたいって強く思っていたらきっと戻れると思う。これまでの関係が、とても深い絆で結ばれていたら、きっと大丈夫だわ。」

大丈夫?

大丈夫。

おばちゃんに言われたら不思議と大丈夫な気がしてくるから不思議だ。