「いいのぉ?」

逆に心配そうにマサキを振り返ってマドカは私の耳元でささやいた。

「いいのいいの。体だけは丈夫な奴だから、すぐ治るって。」

「奴って・・・一応私たちより2個も年上だって。ユイカには幼なじみかもしれないけど、こっちがドキッとしちゃうよ。」

マドカは笑った。

「ふん、どーってことないわ。」

振り返りたい気持ちを必死に堪えながらマドカと走った。


そういう時、いつも泣きたくなるくらいに胸が苦しい。

私はマサキが好きだ。

そう、きっと随分前から。

「ちょっと疲れちゃったよ-。歩こうよ。」

マドカが私の腕を引っ張った。

必死に走りすぎちゃったみたい。

「あー、ごめんごめん。そんな慌てなくてもよかったよね。」

「そうだよ-。ユイカが慌てなくていいなんて私に言ったんじゃない。」

マドカは額ににじんだ汗を手の甲でぬぐった。

さっきまで走っていたのに急に歩き出すと、一気に体が熱くなる。

「暑いね。」

「うん、暑い。カフェで冷たいものでも飲も。」

「そうだね。冷たい炭酸なんか。」

「いいねぇ。早く行きたくなってきた。」

今にも走り出しそうな顔をしているマドカの顔をのぞき込んで首を横に振った。

マドカは舌をペロッと出して笑った。

「あのさ、ユイカぁ。」

「うん?」

「ユイカってひょっとしてさ、マサキ先輩のこと好き?」

思わず足が止まる。

「え?やっぱりそうなの?」

「ち、違うよ。急にそんなこと言うもんだからびっくりしちゃったのよ。」

そう言いながら、顔が熱い。

私ってば、ほんと、こういう話題だめなんだわ。

妙に動揺して、余計怪しまれる。