先ず、私は消極的で、女子ならば兎も角男子には絶対に話しかけることが出来ない人間であり、普段から男女共に私に対する評価が一定になるよう細々と学校生活を過ごしているのだが、今回ばかりはどうしようにも頭が破裂しそうなものだった。

放課後の校門前、ひとりの男子が私の顔を見ていた。彼は同じクラスの藤山くんだった。同じクラスならば普通は少しくらい挨拶するものなのだ。否しなければならない“空気が”二人だけを包み込んでいた。なんと挨拶すればいいんだ、普通なら、女子から男子に対してだとすると……

「また明日ね」

藤山くんは手を振って反対側へ歩いて行った。私はただその様子を眺めているだけだった。顔が熱い。暫くしてから私も家の方向へ歩きだした。考え過ぎていたらしい。さっきの私は変じゃなかったか、でもどうして“空気”の私に挨拶を……。
藤山くんをもう一度見てみると、偶然彼も振り向いており、少し笑ってから手を振っていた。私も小さく振り返し、少し早歩きでなにも考えないように歩いた。今考えたら拙いことになる。緩んだ顔を隠すように鞄を弄ったり、時計を確認してみたりした。私は今翻弄されている。ああ、まったく。これだから私は…………。
屹度わたしは好きになる。