そして、9時――試合が始まる。



「整列」



審判が笛を吹いた。


それぞれのユニフォームを着た選手達が、コートの真ん中で並ぶ。


私の学校は、練習試合は基本ビブスではなくユニフォームだ。昔かららしい。



「これより、東中学 対 西中学の練習試合を始めます」



審判の声の後に、「お願いします!」と頭を下げて叫ぶように言う選手達。


ジャンプボールから始まった試合は、最初から熱く激しかった。



頑張れ、と応援する声があちこちから聞こえてくる。


手に汗握る展開に、私は目が離せなかった。


汗を流して走る選手。シュートが決まって、また走って、ボールを奪って。



そんな試合の中、私はずっと気になっていた。


それは、



「部長!」



千から小佐田先輩へのパスが、うまくいっていないこと。


どうしたんだろう。いつもの千ならパスミスなんて滅多にしないのに。


パスを出しても、ディフェンスにカットされてしまっている。


今も、小佐田先輩に投げられたはずのボールは、小佐田先輩の手に届くまでに対戦チームに奪われてしまった。