数秒して、瑛美は私から手を放した。
すると、今度は私の両頬を押しつぶした。
「ていうか、本当に桃葉のせいだったら、こうやって話そうともしないし!話しかけても無視するか怒るし!」
瑛美の鋭い目で睨まれると、何も言えなくなる。
「だから」
瑛美は手を下ろして、続けて言う。
「桃葉は、自分を責めないで」
瑛美にそんなことを言われたら、頷くしかないじゃないか。
「言ったでしょ?恋をしたら、誰だって悲しむし傷つくんだよ」
「うん」
「仕方のないことなんだよ」
「うん……」
瑛美の目尻には、涙が溜まっていた。
でも、その涙は決して流れない。