私が言えることじゃないけど。


どうか、瑛美を好きになって。


そして、幸せになって。



私には心の中で願うことしかできないけれど、この世にはハッピーエンドばかりじゃないと知っているけれど。


二人には、笑顔でいて欲しい。



芹沢が用具室を出ようとした時、用具室の開いた扉の方を見て目を丸くした。


さっきの千と同じ反応だ。



「た、橘……」



芹沢がこぼした呟きに、私は目を見開いた。


瑛美が、そこにいるの?


私は急いで立ち上がり、用具室前を見ると、そこには扉に寄りかかっている瑛美がいた。



もしかして、今の全部聞いてたの……?


ドクンドクン、と嫌な音を立てる鼓動。


瑛美は、ここに自分がいることを知られて焦っている様子で、目を泳がせた。