ひとつの恋の終わり。
曖昧なラインの上を辿っていた芹沢の想いが、そっと軽やかにそのラインを外れた。
諦めたくないと思うことも、諦めなければと思うことも、どちらも勇気がいる。
叫びたくなるくらいの勇気が。
「なんか、スッキリしたかも」
私から一歩離れた芹沢は、グッと伸びをして、私に背を向けた。
芹沢の背中は、いつもよりも大きく見えた。
「ありがとな、金井」
お礼なんて、言わないでよ。
今、芹沢はきっと、泣きたい気持ちでいっぱいでしょ?
それなのに、どうして、そんな声でそんなことが言えるの?
「俺、お前のことホントに大好きだったぜ」
芹沢は、そう紡いだ言葉の裏で、「好きになってよかった」と囁いているようだった。
過去形でそう言ってくれた芹沢に、私は涙で濡れた顔をくしゃりとさせて微笑んだ。