……私、わかった気でいたけど、全然わかってなかったね。


瑛美の勇気は、想像していた以上に大きいものだった。



芹沢の想いだけでなく、瑛美の苦しい片思いにも、気付けていなかった。


私の存在が、どれだけ瑛美の恋心を傷つけてしまっていたんだろう。




「それでも告白してきたことに驚いたけど、その時思っちまったんだよ。次に好きになるなら橘がいいって」




芹沢は、あの奇跡を否定するどころか、さらに素敵な瞬間へと変えてくれた。


いつの間にか、涙は止まっていた。



「変だよな。……でも、これで吹っ切れそうだ」


「え……?」


「なあ、金井」



芹沢は抱きしめていた腕の力を緩め、私と向かい合う。


芹沢は、清々しいくらい爽やかに微笑んでいた。



「俺を振ってくれよ」