落ち着いた頃には、もう夕方だった。
教室に戻ると誰もいなかった。
自分のバッグをとって、帰る準備をする。
バッグの中の携帯を見ると、着信履歴が出てきた。
みんなに、心配かけちゃったな...
ひとり携帯を見つめてじっとしてると教室に誰かが入ってきた。
振り向くとそこにいたのは美桜だった。

｢菜美ちゃん、どうしたの？｣

私の顔を見た美桜は心配した様子で駆け寄ってきた。
でも、理由を言えるはずがない。

｢菜美ちゃん...どうして、泣いてるの？｣

｢...ちょっと、こ、こけちゃって...す、すごい痛いなぁって...あはは...｣

バレバレな嘘。
でも、美桜は優しいから、｢そうなんだ｣ってそれ以上は何も聞いてこなかった。
優しい声で、優しい笑顔で｢帰ろっ！｣って...