「…………七波ちゃん」


車の中。

静かに、神凪さんが話す。


「峰葉、目は覚ましたんだ」


「ああ、よかった」

そう言ったけど、神凪さんはあまり良さそうではない顔をした。


「………あのね。七波ちゃんのこと、
まだずっと幻だったと思ってるみたいで。

あれは本物だったよって言うと、
『嘘だ、嘘だ』って、暴れるんだ」


「え………」



「それくらい、峰葉の精神は、危うい状態になってるってこと」


「………どうして」



しばらくの沈黙の後、
車は神凪さんのお屋敷に着いた。