「あれは、ちゃんと忘れず持ってきたか?」
あれ、というのは今日美波に渡す、ホワイトデーのお返しのことだろう。
車に乗って、美波の家に向かいながら、先輩にそう問われた。
「もうしっかりと持ってきました!肌身離さず持ってたんで。」
「碧は相変わらずかっけぇーな。何円くらいかかったんだよ?」
「ペアなんで、2つで5万くらいっすかね。文字も入れてもらったんで、少し高くなってしまって。」
「まじでカッコ良すぎだろ〜!なんて文字を入れたんだよ〜。」
「それは秘密っす。」
「なんだよ〜!」
バシバシと俺の肩を叩きながら、運転して前を向いている先輩。
俺のことをカッコいいとか言ってくれる先輩だけど、先輩だって彼女をすっげー大切にする人。
俺の周りにはそんな風な人ばっかだな。
「着いたぞ〜。美波は、もうすぐ部活終わるから急げよ!美波はいつも部活終わりは絶対真っ直ぐ家に帰ってくるから。」
「先輩、ありがとうございます。」