「みすゞ、本当に大丈夫?」

白い空間にベッドがポツリと寂しく置かれている。

「平気よ、母さんは心配性ね」

太宰が盾となったお陰でみすゞの怪我は軽傷とは言えないが大事には至らなかった。

母には全てを話していない。自殺未遂だなんて口が裂けてもいえない、これだけは譲れない。

「中島先生に聞いたときは本当に驚いたわ、無事で本当に良かった。貴方までいなくなったら・・・・」

みすゞの手を強く握る。
父はカメラマンだった、人から植物まで幅広くフィルムに収めてきた。
世界を飛び回る事もあり、展覧会なども開き有名だった。何よりも家族を大切にしてくれた優しい人。

アジアに赴き貧困の様子をテーマにした写真を撮影している時、流行り病に当てられ亡くなった。医療施設が満足に無かった地域だったので、助かる見込みなど有りはしなかった。

「向こうに行ったら追い返されるわ、母さんの側についていなさいって」

母はきょとん、と顔を固まらせたがすぐに笑いだした。

「それなら安心ね」