「……黙っててごめんね。なんか言うタイミング逃してさ」


あたしが言うと、梨花子は少しだけ拗ねたように呟いた。


「……そうだよ、人のこと言えないじゃん」


頬を膨らますのは、梨花子の得意技。


だけど、今日はいつもよりちょっと堅い表情だった。



そのまま一人で黙々と作業を始めた梨花子は、きっと今、複雑な心境なんだろう。


店長との間に芽生えた恋。

幸せいっぱいの状況を、あたしに話したこと。


だって。

素敵な恋を見つけた梨花子と、陰で見つめることしかできないあたし。


そんな、まるで正反対の二人だから。