それまで手を止めることなくドーナツを食べ続けていた梨花子も、雰囲気が読めたのか緊張した面持ちであたしを見つめる。


このドーナツ屋で、今まであたしたちはたくさんお喋りしてきた。
何気ない日常の出来事から、真剣な話まで全部。


だから今日も最初からここって決めていた。


「あのね、梨花子」

「ん……?」

「あたしね、はっきりと分かっちゃったんだ。
今日みんなに好きな人いる?って聞かれた時、自分の心の中に誰が住んでいるのか」


梨花子は相槌の代わりに、コップの中でストローをくるりと回す。

氷がカランと音を立てた。


「だから、言えなかった。一志のこと。言ったらいけないって思った……」


そう――。

もしあの時言っていたら、あたしは今頃罪悪感でいっぱいになっていたと思う。


「美未、それって……」

途中で止められた梨花子の言葉に、あたしはゆっくりと頷いた。