その時、誰かのケータイが大きな音を鳴らした。


「わ、ごめん。オレオレ」


話を仕切っていた男子が慌てて立ち上がり、ポケットからケータイを取り出す。

その瞬間、にへらっと目じりが下がった。


「わりっ!話進めてて」

そう言ってケータイ片手に教室を出ていった彼の様子から、誰もが思ったこと。


「何、アイツ彼女できたの?」

「みたいだねー」

「ったく、幸せな雰囲気醸し出しやがって」

「あはは。ひがみー」


こうなってしまったら、話はどんどんずれてくる。

一気に加速する恋愛トーク。


中でもいちばん盛り上がったのは梨花子の時で。


「えっ!?15歳も上!!」

「えへへー、そうなの♪」


いつもノロケ話を聞かされているあたしは「またか」なんて思ってたけど、他の人たちはみんな興味津々に耳を傾けていた。


でも、あまりに盛り上がるトークに、あたしは少し、油断してたんだと思う。