「なによ、その興味なさそうな返事は」

「興味ないもん」

「王子様だよ? 王子様にも興味ないなんて、桜子ってほんと干物みたい」

干物みたい、だって。
私は、はっはーとわざとらしく声に出してわらってみせた。
あ、そういえばさっき『花のようですね』なんて言われたんだっけ。

「王子様ねぇ。で、また医学部なの?」

「それがね、農学部なの! 私ってさぁ、今まで医学部しかチェックしてこなかったじゃない? まさかの農学部よ。盲点だったなぁ」

私としたことが固定観念に縛られてしまっていた、と麻衣は深いため息をついた。
なんて大げさな……。
いつもながら、この男前に対する情熱というか、執着にはあきれてしまう。

薬学部に入ったのは医者の卵と付き合うためだ、ときっぱり言い放つこの女友だちが、私は心から好きなのだけど。

「医学部の子も薬学部の子もみんな騒いでるよ。桜子、見た?」

王子様ねぇ。
そんなにかっこいい人なら、いくら私でも記憶の片隅には残るだろうけど。

「見てないし、興味もありません」

麻衣は手にしたトートバックをぎゅっと抱えるようにして「よし! 探してくる」と言い残すとくるりときびすを返して走っていってしまった。

「がんばってー」

麻衣の背中に声をかけて、一体なにを?と自分で自分に突っ込んだ。