標本展示室を全て回り終えた頃には、私はさすがにぐったりしていた。

見ないようにしていても、やっぱり視界の片隅に常に虫が見える。

標本展示室は、生きていない、動かないものだったからまだよかったものの、その後の特別生態展示コーナーは拷問だったといってもいい。

『昆虫に触れてみよう!』なんていう丸い文字で書かれたポップを見たとき、晴は嬉しそうに「うわぁ!」と叫び、私は「うわぁ……」と悲鳴をあげた。

幸いなことに、そこは昆虫以外に魚もいて、私はひたすらその魚を見て、晴が「かわいいなぁ」とか「きれいだなぁ」とか言うのを背中で聞いていた。

「さて、いよいよメインです」

だから、晴が嬉しそうにそう言った時は、正直なところ、疲れきっていて「ふぁい」と気の抜けた返事しかできなかった。