今まで付き合った男は片手で数えきれないけれど、両手だと数えられるくらい。

年上も、同じ年も、年下も、大きな声じゃ言えないけど、実は先生となんていうのもある。

遊園地とか、水族館とか、夜景とか。
歴代のオトコたちは、私を喜ばせようと、もしくは私に好かれようといろいろなところへ連れていってくれた。

だから、この世にデートコースなんてものがたくさんあることも知っていたし、一通り行ったと思っていたけれど。

こんなところにデートで来たのは初めてだ。
そもそも、これがデートかどうかはあやしいのだけど。
デートだろうと、そうじゃなかろうと、きっと、これからだってないだろう。
こんなところに日曜日の昼間にわざわざくるなんてこと。
紫外線だって気になるし、見ないように気づかないようにしてはいるけど、きっとこの芝生にだって虫はたくさんいる。

これからもきっと出会わないだろう。
こんな場所に連れてきて、女の子を残して一人で嬉々と虫探しに行っちゃうような人。

「本当、信じられない」

木漏れ日の下、小説に目を落とす。

読みかけ、なんて言ったけど、本当は何回も読んでいる推理小説は、結末を知っていているからこそ穏やかで、こんな日曜日にふさわしいと思った。

知らなかった。
こんな日曜日も悪くない。